迷惑、という言葉が重くのし掛かる。
そうだよ。
山田君、処刑されちゃうんだよ?
山田君がいいって言っても、そんなの、
いい訳がない。山田君が傷付くのは嫌だ
。絶対に、嫌だ。
するとその時、少し乱暴に、山田君が私
の肩を抱いた。
「どうせ俺を日本に返すつもりなんてね
ーくせによく言うよ。それとな、そうや
って美姫を揺さぶるような汚ねー真似は
やめろよ!」
山田君はそう言うと、そのまま部屋から
出た。
「一つ申しておきますと、現在、城内は
厳重な監視がされておりますので、脱走
なんて馬鹿な真似は、止(よ)してくだ
さいね」
部屋から出たとたん、それまでずっと黙
っていたスイにそう言われて、山田君は
苛立たしげに舌打ちした。
そして、スイに何も言わないまま、私を
グイグイと引っ張っていく。
やがて、やって来たのは、山田君のお父
さんの部屋と同じ、チョコレート色の大
きなドアの前だった。


