そんな話が、現実にあるなんて。
きっと、そのとき王様だった人は、すご
く苦労して、辛かったのかもしれない。
というかそうに決まってる。
それじゃあ、人間が忌み嫌われても仕方
がないよね……。
でも──。
「私は、そんなことしないです」
そう言うと、山田君のお父さんの視線が
鋭くなった。
「国を乗っ取ろうとするやつが、正直に
"国を乗っ取ります"なんて言わないだろ
。そんな言葉だけで、信用なんか出来な
い」
「でも、本当に本当に、私、山田君が好
きなんです!」
そう言うと、山田君が優しく微笑んでく
れて。
山田君は優しく私の頭を撫でてから、お
父さんに向き直った。
「俺、天使なんて辞めてもいい」


