山田君が、そんなお父さんに負けじと睨
みかえす。
見えるはずの無い火花が二人の間に見え
た……ような気がした。
「…俺、美姫と別れるつもりないから」
「ふざけるな。お前は唯一の跡取りなん
だぞ。お前が居なくなったら、この国は
どうする。だれが治める?」
「そんなん、誰か親戚でも呼べよ」
すると、不愉快そうに眉を潜めるお父さ
ん。
「お前は忘れたのか……?この国が昔、
人間によって滅ぼされそうになったのを
」
え……?
滅ぼされそうに……?
「昔、この国を治めていた王は、ある一
人の女性に夢中だった。すごく愛してい
た。女もその王を好きだと言っていて、
二人は結婚し、ここの国に住んだ」
何もわからず戸惑う私に聞かせるように
語り出すお父さん。
「しかし──女は王を愛してなど居なか
った。女は、この国を乗っとりたいが為
に、王と結婚した」


