そこに立っていたのは、あの時の男の子
だった。
スイは、チラリと私を見てから、山田君
に視線を戻す。
「この方も連れてきたんですか……」
「俺はもう美姫と離れたくないんだよ」
そう言って私の肩を抱き寄せる山田君。
「……旦那様がお待ちです。こちらに着
いてきて頂きますよ」
まあ、力付くでもつれていきますけど、
と面倒そうに呟くスイ。
そんなスイに舌打ちした山田君は、私の
手を包み込むように握った。
そんな山田君の手を、握り返す。
──スイに連れてこられたのは、大きな
チョコレート色のドアの前。
やけに威圧感のあるそれに、思わず生唾
を飲み込んだ。
「や、山田君……」
ここ、どこ?というように山田君を見上
げる。


