──四月。



学校中に、女子のすすり泣きが広がって
いた。



無事に二年生になった私は、新しいクラ
スで、女子が悲痛そうな声を漏らしなが
ら表情を驚愕の色に染めるのを、呆れた
ようにみていた。



……たかが男子が一人、転校したくらい
で大袈裟なんだから。



そうは思えど、どうしてこんなにも女子
が残念がっているのかは、安易に予想が
ついた。



その転校してしまった男子、というのが
山田君だからだ。



まあ、実際は別に引っ越したわけでもな
んでもないので、学校を辞めただけなん
だけど。



そもそも山田君がこの学校にやって来た
のは、私の好きな人──先輩がこの学校
に居たからだ。



近くに居れば、私の恋にもっと協力的に
なれる。



そういった理由で編入してきたんだから
、私が先輩を好きじゃなくなった今、山
田君がこの学校に残る意味は無かった。