山田君の甘い香りが、鼻を掠める。
……ていうか男のくせに、いい匂いしす
ぎでしょ、だなんてどうでもいい事を考
えていたのは、そうでもしないと、冷静
さを保てそうになかったから。
山田君が、私の頭を抱え込むようにして
、山田君の胸に押し付ける。
若干押し付けすぎて息苦しいくらい。
「泣けばいいだろ。失恋したら……泣く
だろ、普通」
「もう……泣いたもん」
「もっと泣け。」
もっと泣けとか、意味わかんないし。
だけど、そんな風に言われたら……。
「……っ…」
泣きたくなくても、涙が出てきちゃうじ
ゃん。
それから私は、暫く山田君の胸の中で泣
いていた。
「──ていうかなんでチョコレートケー
キ、食べちゃったの?」


