二人が互いのことを名字から名前呼びになったあるとき、神崎が言っていた。


「昴はまだ子供なの。
だから誰かがあの子を見守らなければならないのよ。母親の温もりのように、優しく包みこんであげないと。
だからね想汰さん」

「…言うな。わかってる。あいつの面倒を見てほしいんだろ」


神崎が言おうとした言葉を先に言うと、彼女は「さすがですね」と微笑んだ。


「もし…もしね。私に何かあって、もし私が昴の前から消えたら、彼は壊れてしまうわ…。だから、そのときは、想汰さんに任せる」

「子守りは無理だ」

「そんなことないですよー。だって昴、想汰さんになついてるもの」

あれは…なついてるというのか。

返事を考えてると、クスクスと神崎がほくそ笑む。