それらを眺めてると、ふいに視界のすみに目慣れた青が通りすぎようとしていた。
「………結海？」
彼女は応えない。けれど確信した。
彼女は結海だ。
確信すると同時に彼は走り出した。
バシャバシャと異様に重い水を掻き分け、彼女の元へ。
「結海！」
彼は走って、彼女は歩いてるのに、距離は全く縮まらない。
むしろ、どんどん遠退いていく。
「結海！待って！」
彼女の青と海の青が混ざりあい彼女の姿をぼやかしていく。
「結海……！」
水をふんだんに含んで重くなった服に足をとられ、彼は水の中に膝をついた。
水が重い。
他の人は進むのに、なぜ自分だけ動けないのかと歯噛みする。
