少しだけいつもの彼に戻ってきた気がして、昴は体の力を解いた。 しかし。 「けどな昴。俺はまだ、一番伝えたいことをお前に伝えてない」 「えっ?」 水谷は酷薄とした笑みを貼り付け、手すりから手を離す。 「水谷ッ!」 傾いた斜面で、体を支えるものがなくなった水谷は重力に従い海に落ちていく。 昴はとっさに叫び、水谷の片腕をつかんだ。