船内は思ったより水が入り込んでなかった。

ときどき床に水溜まりがあったが、今の状況では特に気に留める必要もないだろう。


だがたまに船体が右に傾き、安定した歩行を奪う。

窓の外は大雨だ。
幾重にも重なった波が船首を叩き、寄せては引くを繰り返す。

早く戻らなければ、昴は内心の焦りを出さないように壁に手をつきながら慎重に歩を進めていた。