振り向かずに言うと宮野は一瞬言葉につまった。 「…私は認知してなかった。だが、私の責任だろう。どんな処罰でも受ける覚悟だ。 しかし今は、乗客の命を優先すべきだ!だから早く乗れ!」 「船内に二人、…いえ一人忘れ物を取りに行きました。だから、待つ」 「忘れ物だと…?物よりも命の方が大切だろう!なぜ行かせた!!」 「………きっと、その忘れ物が彼にとって大切なものだからでしょう」 風で乱れる髪を押さえながら、亜希子は遠くを見て言った。