「……安部さん?」


「…雪……すばる、さん。あの、待ってますから、ずっと」


想汰とは正反対の労りの言葉に昴は笑って、亜希子の頭を撫でる。

「そんな…これが今生の別れみたいな顔をしないでよ。水谷を見つけたら、すぐ帰るから。それじゃあ」


昴は軽く手を振ってロープの片方を想汰に渡し、船内に駆けていく。


遠く小さくなっていく背中を、想汰と亜希子は見届けていた。