昴は踵を返すと、船内に駆けていった。
「おい雪村!どこにいく!!」
後ろから想汰の怒号が聞こえてきた。
ビクッと立ち止まり、昴は険しい顔つきで想汰を見据える。
「――水谷を探しにいく」
「今この船は沈みかけてる。そんな中でたった一人を見つけるのは困難だ」
「…でもっ、だからって見捨てるのか?まだ中にいるんだろ?救助なんて待ってられない。だからオレが行く」
絶対譲らないという固い意思がこもった目で睨み付けられ、想汰は珍しく口ごもる。
進んで行動し、想汰の意見に反するなど、2年前までは考えられなかった変化だ。
想汰はやれやれと肩をすくめる。


