「雪村さん?」


亜希子の声など届かないように、昴は船幽霊が現れた場所を凝視する。



「あの幽霊…指輪をしてなかった?」




「ゆ…指環、ですか?…幽霊が?」

「うん。でも、ただの指環じゃない。見覚えある。あれは」


オレが結海にあげた指環だ。


「!」

亜希子が息を呑んだ気配がした。
その表情の真意に気づかず、昴は苦笑する。

「……きっと気のせいだろうね。また結海の幻でも見てたんだ…そうだ、きっと」