ぐしゃりと。
何かを容赦なく潰された気がした。
気づくとスノボに乗ったまま方向転換していて、いつの間にか誰もいない雑木林のところまで来ていた。
「……。」
遠くに見える、無価値同然のカップルたち。
でもそれはあくまで俺にとっての話であり、彼らにとって相手はかけがえのない存在なのだろう。
俺にとってのハルキもそう。
世界でただひとりだけの俺の姫。
彼女がいれば何もいらないし、俺の体も
抱きしめるための腕と
見つめるための目と
愛を囁くための口と
君の優しいさえずりを聞くための耳と
それさえあれば他の器官なんていらないと。そう、思っていたのに。
「……はるき…」
思い出すのは先程の、ハルキと見知らぬ男が親しげに話す光景で。
あんな光景を見るくらいなら、この目もいっそ、潰してしまおうか。


