俺と君の現実論


こっちがイライラしていることになかなか気づかない害虫を捻り潰してやりたい。

でも、それじゃあ手が汚れてしまうしなあ…。


「えっとお、一緒に滑りません?っていうか滑りましょ」

「は?」


ぐいいっと強引に腕を組まれ引かれたものだから、つい。


「きゃっ!」

「…触んないでくれる?気持ち悪いんだけど、つーか近寄んな。ケバいし臭いしブサイクだし。
そんな格好して自分可愛いとか思ってんのかよ。気持ち悪い」


雪の上に尻餅をついた害虫を置いて、さっさとスノボで下へ滑った。

もうここにいたくない。

早く彼女に会いたい。

早く、彼女に、抱きしめてもらいたい。


「……っ」


虫酸が走り全身が痒くなる。

他の人間に、いや、害虫共に触れられた箇所を切り落としてしまいたい。