「松掛明久、中3です。宜しくお願いします。」

「相楽樹里、高1です。本家の方々の御迷惑にならないよう精一杯頑張ります。」



春日屋業務に復帰して3日目。



春日屋の筆頭結界師という千隼君のポジションに、制服姿の男女が代わりに据えられた。





──時を遡る事二日前。





「えー、皆さん、ここで報告があります。」



3日間の夏休みも終わり、四仙メンバーは昼頃に理央ちゃんの部屋へ収集された。


いつもはだらけた姿勢の理央ちゃんが珍しく正座なんてしているから、何事かと思えば。





「明後日、例年通り千隼が全国ツアーに旅立ちます。」




千隼君が、merutoの全国ツアーに旅立つらしいのです。




「ああ、今年も?」

「ちー君って何げに人気だよねー。」




千隼君のいるmerutoは国民的アイドルグループだ。


梓情報によるとメンバーは6人。

セクシー系も可愛い系も兼ね揃え、バラエティーに富んだ今時なアイドルらしい。



思えば千隼君はしょっちゅう芸能界の仕事でいなくなってたし、それほどの人気者が全国ツアーに行くのは当然の事だよね。




『おめでとう、千隼君。』



千隼君の方を向いて頑張ってねと言うと 、ああ、と笑顔が返ってきた。



『そうえば千隼君って……女の子駄目だっていうけど、ファンの子は女の子ばっかりだよね。大丈夫なの?』


「ああ。物理的に距離が遠いし。それに、応援してくれるのは本当にありがたいことだから。」




アイドルの鏡だね。




……ん?



『あれ?じゃあ、その間の結界師って大丈夫なの?』




ふとそう思い、理央ちゃんに聞いてみると、理央ちゃんは顔を強ばらせる。




どうしたんだろう。

でも理央ちゃんからの返事は帰ってこなくて。





「ちー君の結界強いからいなくなるときついよねー。大人も皆頼ってるし。実戦もほぼ一人で出来ちゃうしー。」


「去年その間は色々死にかけたから、今年は特別メンバーでまかなおうってなったよな?」


「なったねー。」




皐月とハルは顔を見合わせてうんうん、と頷きあってる。


そして理央ちゃんの方を見て……。



「「対策はとったのかよ。」」



息ピッタリ。

実はやっぱり仲良いよね。


ハルと皐月と私と千隼君。



8つの目に見つめられて、理央ちゃんは小声で言った。




「対策ならとった……けど。」


「……言っておくけど、分家の方々の厳正な判断らしいからな。永遠子、頑張れ。」


『え?うん。』




……何を?


今の話にカミウチが頑張る点あったかな?と首を傾げる。



理央ちゃんの真意に真っ先に気づいたのはハルで。



「……え、ちょ、変な事言わないでよ?まさかあの子達じゃないよねっ?!」


「……松掛と相楽なんだよ。」


『松掛と相楽?』



誰?と聞くと答えたのは皐月で。


「定例会の時の、分家のおじさんとおばさんいただろ。ほら、子供ゴリ押しの。」


『……あ。』




《どうぞ松掛明久をよろしくお願いします。》

《我が相楽家もしっかり教育をしてきました。……娘の樹里は有能で……》





……うん、思い出した。