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「何で黒羽屋を助けなきゃいけねーんだよ。永遠子。」
走りながら皐月は文句を言う。
確かに正論だよ。
でもね……
『友達の力になりたい。2人共、お願い!力を貸して!』
「永遠子ちゃん……。」
友達の、願いは聞いてあげたいんだ。
「やっぱりとわっちゃんは、人生回り道してるよねー。」
ハルは言う。
私の後ろを走っているから、その表情は見えないけど、声はどこか明るかった。
「いーよぉ、とわっちゃんのお願いなら、いつでも聞いてあげるー。」
そうして、私達は美鞠ちゃんが何かを感じた場所──社に着いた。
そこは、神前という空気が漂っていて、お祭りの賑やかさとは、とてもかけ離れていて。
でも、空気が黒い。
それは、学校で感じる邪気よりもずっとずっと、重い。
「ご丁寧に結界を張ってるって事は此処だな。千隼がいれば楽勝なのに……。」
「貸せ。どうせ潤の結界だ。私なら解ける。」
美鞠ちゃんは結界に手をかざし、くるっと回った。
『か……かわいっ……。美鞠ちゃん……!』
「はいはい、とわっちゃん。今シリアスねー。」
悶えてる私に、ハルのツッコミが鋭く入る。
「出来たぞ。」
『よし、じゃあ行こう。』
一歩を踏み出そうとしたが浴衣の袖を、ハルと皐月が引っ張るせいで入れない。
『ちょ、二人とも!』
「春輝、あそこ。」
「あそこならあっきーもいるしねー。」
ハルは美鞠ちゃんを、皐月は私を強引に神社の建物内に押し込み、扉を閉めた。
そこは、見覚えがある場所だった。
私が毎年、カミウチの仕事をしていた建物だ。
「とわっちゃん、美鞠、此処にいてね。」
ドンドンと激しく美鞠ちゃんは扉を叩く。
「ふざけるな、甲斐原春輝!私も戦いに行く。扉を開けろ!」
でも、どんなに扉を叩いても、開かない。
春日屋一の呪術師、甲斐原春輝の鍵だから、そんな簡単に開くはずはないけれど、びくともしない。
だめだよー、と間延びした声が聞こえる。
「女の子に傷、ついたら困るでしょ?」
「大人しくしてろよ?」
そうして、足音は遠ざかってしまったのだ。
皐月side
その場所は、まるで戦場だった。
「幽玄双輪、光の術。」
「東条皐月……?」
突然現われた光に、志紀と潤は驚いてこっちを向く。
「てめぇ、甲斐原春輝……邪魔しに来た訳?」
「するかボケ。」
苦々しい表情の潤に、満面の笑みで春輝は言った。
俺は敵は誰なのか、周りを見渡して確認する。
さっき天命府の匂いがしたから、覚悟はしていた。
でも、感じる気はどこまでも黒羽屋のもので。
「何なの、お前らの相手……黒羽屋?」
そういうと、潤と喧嘩していた春輝も異様さに気がついたようで、周りを見渡した。
「仲間割れって事?嫌われたねー、志紀様も。で、あんたほどの術者が何でこんなのに手こずってる訳ー?」
「うるさいよ。戦えば分かる。それより永遠子はどうしたの?一人にしたら承知しないよ。」
どこまでも永遠子中心なんだな、こいつ。
「年増人形師と一緒だから大丈夫だろ。」
「みまたんの悪口言ったね?東条皐月。」
一応こいつら助けに来たんだけど……やっぱり黒羽屋と春日屋。
顔を合わせれば火花は散るようだ。
「俺達は別に助ける気はないけどー、とわっちゃんの頼みだから仕方ないでしょー?」
「さっさと終わらせよう。」
「了解のすけー☆」
皐月side end


