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俺は、お祭りの賑わいとはむしろ逆の、神社の社にいた。
隣には、志紀サマ。
せっかくの人間の世界の祭り。
みまたんとのデートを予定してたんだけどね。
永遠子サンに会うちょっと前に、気配を感じたんだ。
殺気に似た、黒羽屋独特の。
「潤は美鞠思いだね。それに加えて凄く不器用だ。怪我させたら嫌だから、あえて遠ざけたんだろう?」
志紀サマは微笑んだ。
優しそうな顔。
ついこの前までは、千年前みたいな優しそうな顔を見れるなんて、微塵も思ってなかった。
桜サマの死後、生まれ変わった志紀サマの見せる笑顔は殺気に満ちてたっていうか……。
だから、志紀サマを変えた永遠子サンは……凄いと思う。
「みまたんに消えない傷を残したりしたら……俺、死にますから。」
「駄目だよ。死ぬ前に、怪我させた奴らを消さないとね?」
訂正)志紀サマの笑顔はやっぱり黒い。
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明希side
俺、思います。
やっぱり梓ちゃんは怖い。
昔は……仲、良かったかなぁ……?
「明希ちゃん、これあげるー!」
「えー、なーに?」
梓ちゃんが笑顔で手に何かを握らせた。
「ぎゃああああ!!」
「どしたの、明希?!」
急いで駆けつける姉ちゃん。
「ねーちゃぁーーーん!!」
「何だ、虫か。大丈夫だよ。」
そう、握らされたのはゲジゲジだった。
……いや、初めから嫌われてた。うん。
ついでに、姉ちゃんは男前だった。
《何考えてルノー?明希ちゃん。》
「メアリ。」
メアリはスマホ。
ちなみに姉ちゃんのスマホのジュリアとは、メーカーが一緒だから親戚にあたるらしい。
《シューチューしなサイ!明希ちゃんはまだまだ半人前ナンダカラッ!》
「ごめん。」
そう、俺は今社、神殿にいる。
カミウチは祭りの度に社にこもって、モノが暴れないように祈祷をするのが習わしで、
毎年姉ちゃんもやってたから、お祭りに出れなかったんだ。
「姉ちゃんは今頃、念願のりんご飴食べてるかなぁ……。」
《明希ちゃんは本当お姉ちゃんっ子ネ。》
呆れた声でいうメアリ。
「うん、自分でも割と分かってるよ。でも……シスコンっていうのとは違うんだろうな。別に姉ちゃんが誰と何しようが興味ないし。」
憧れに近い気がする。
「立派なお姉さんを持った弟は、苦労しますよね。」
鈴を鳴らすような笑い声と共に声が後ろから聞こえた。
振り返ると────
白い長い髪をサラサラとなびかせ、狐のお面を被る少女がいた。
巫女さんのような服装をしている。
「………誰すか。」
「少しばかり怪しいお姉さんと思って頂ければ。」
「いかにも怪しいすけど……。それで、こんな所になんの用ですか?」
俺は少し聞くのが怖かった。
だって黒羽屋の刺客だと思ったから。
「神内明希。可哀想な子。」
その子はそう言ってお面を取った。
白い髪に赤い目の、現実離れした美しさをもった少女。
「その命、終わらせてあげましょう。大丈夫、暁様は貴方をご所望ですから、ちゃんと天命府に連れて帰ってあげます。」
見惚れるような笑顔で、その子はどこからか、鎌を取り出した。


