『こちらは……美鞠ちゃん。』



美鞠ちゃんは私の後ろに隠れて、それからちょこっと梓と玲の方に顔を出した。




「2人のことを人形にし『あーあーあー』」



笑顔で暴露しかけたハル。


悪意を感じます。



「美鞠……だ。」


「この子可愛い。梓の次にだけど。」


「何年生?」




玲からの質問に、無言でこっちにヘルプを求める美鞠ちゃん。



「この子は2『皐月も黙っておこう。』」



皐月今、21歳って言おうとしたよね。



2人ともこんな可愛い子に意地悪しちゃだめだって!



『2年生だよね、美鞠ちゃん。』


「そ、そうだ。2年生だ。」




2年生にしてはちょっと大きいかもだけど。



『保護者の人にちょっと預けられて。一緒に回ってもいいかな。』



保護者の人に美鞠ちゃんは一瞬ピクッとしたけれど、嘘は言ってない……ということにしよう。


「いいよー。梓、子供は好きよ。」

「ああ。」






『はぐれたら困るね。美鞠ちゃん、手繋ご。』



夕食時だからかもしれないけど、物凄く人が多い。

それに大人ばっかり。


もし美鞠ちゃんが迷子になったら……うん、殺されるね、潤君に。



ふと隣を見ると美鞠ちゃんがいない。



“血祭り”と言うワードが一瞬ちらついたのは仕方がないかと。



美鞠ちゃんは、足を止めていた。


私のすぐ後ろにいた。



『どうしたの?』


「……いーのか?」


躊躇いがちにこっちを見つめる。


いいのかって、手をつなぐ事?



『おいで!』



「お前は……敵に優しすぎる。すぐに黒羽屋の誰かに利用されるぞ。」



そういいつつも、美鞠ちゃんは笑顔だった。


美鞠ちゃんを溺愛する潤君の心がとても分かった瞬間だった。






「じゃあ美鞠ちゃんのもう片方の手は梓が、繋ぐ。玲君は永遠の隣でも行ってなさい。」



こくん、と頷く美鞠ちゃん。



「あ、あとそこの男共。何永遠に近づこうとしてる訳?」


言葉と態度が裏腹なのは可愛いって、さっきの美鞠ちゃんの行動で分かったよ。



だけど、梓、怖い。


笑顔、怖い。←カタコト



「梓は可愛いんだから、あらゆる人災から守りなさい?」



「「……ハイ。」」



そしてやはりハモる、皐月とハルなのでした。






「何あれ、あの美形集団……。」

「あ……れ、伝説の水口ツインズじゃねーか。黒龍の前総長の!」

「馬鹿、見ろよ。現総長もいるだろ。目合わせんな。」




ざわざわざわ、と歩く度に向けられる視線。




『耐えきれない……主に三人のせいで!』



「ごめんね。」



困ったように笑うハル。



「別に慣れてるじゃん。」



今更何でもないでしょー?と梓は言うけどさ!



『そうじゃないの!これはお祭りだよ?もしかしたら一生にこれきりかもしれないのに!』




「春輝ぃ、最近遊びに来てくれないじゃん。」

「寂しいよぉー。」




耳を疑うような甘い声。


ついでに、皆素敵なお姉さん。



『それと……春輝君?』



最早笑顔、引き攣るよね。



「いや、違っ……」


ぶんぶん、と手を振って否定する。



「言っただろ、こいつは可愛い顔してしてる事はしてるって。な?春輝君。」



主に春輝君、に悪意を込める皐月。



「春輝君に純情なんてこれっぽっちもないのよー?」


これっぽっちを強調する梓。




「ああ……一時期なんて「「「きゃっ!」」」



玲が何かを言おうとした時、すぐ近くで女の子の叫び声が聞こえた。




『どうしたのかな、騒ぎ?』


「永遠子ちゃん、押されるー。」


『大丈夫?!美鞠ちゃん!』




皆が騒ぎに何事か、とぐいぐい押すせいで、美鞠ちゃんが潰れかけてる。



「きゃ、ごめんねー、永遠。」



ドン、と押され完全に人の群れから出てしまった。