ハルと皐月は志紀をじっと睨む。


火花がバチバチな所悪いんだけどさ……





『あの……梓は機嫌が悪くなると凄く怖いのよ。そろそろ行きません?』


「うん、その件に関してはとても同意。」

「水口さんは怖い。敵に回せない。」




まだ割と転校してきたばっかりな皐月に恐怖を植えつける恐ろしさです。




「いいよ、行けば?」



志紀から帰ってきた答えは割とあっさりしてた。


何が目的か分からなかったけど、春日屋に絡みに来てるならそう簡単に帰してはくれないと思ってたんだけど。




「じゃあ……永遠子。行こう。」

「ただし条件がある。」




さあ行こう、としたところに静止の声。










「永遠子ちゃん、来い。」



美鞠ちゃんに腕を掴まれる。



「美鞠のお気に入り。白い浴衣に桜の髪飾り。赤い鼻緒の下駄。美鞠に従え、美しきもの達よ、神内永遠子を着飾れ。」


美鞠ちゃんは目を閉じて言った。



『……志紀、初めに選ばなくてごめんね。』



察した、うん。


志紀は……私に自分の選んだ浴衣を着せにきたのね。


何故かは分からないけど……。



という訳で、桃色浴衣から一転、白い浴衣になりました。




「何あれ……マジック?」

「すごーい。」



ざわめく声が聞こえる。


どうやらマジック……ということにしておくようです。




「それともう一つ、お願いがあるんだよね。」



今まで黙っていた潤君が口を開いた。



「みまたんも、連れて行ってあげて。」


「は?何なんだよ、潤。お前に指図されたくない。潤のくせに生意気だ。」




ぎゅっ、と美鞠ちゃんが潤君の足を踏んだ。



「永遠子サン、散髪代。」


『え、取るの?』



散髪代っていうのはあれだね。


私がテキトーに切った髪をおしゃれに揃えてくれたやつだ。



厚意でやってくれてると思ってたんだけど……



「当たり前じゃん。世の中ギブアンドテイクだよ。」




……モットモデスネ。



「潤!勝手に話を進めるな!」


「俺は志紀サマと一杯呑むの!子供のお守りなんて、したくないから。」



そういった瞬間、美鞠ちゃんは……



「私は21だ、馬鹿!!」



凄い形相で潤君のお腹に蹴りを一発。



美鞠ちゃん、21って私より5歳も年上だったのね……。




「もういい!!永遠子ちゃん、行こ!!」


『あ、う、うん。』



ぐいぐい、と美鞠ちゃんに腕を引かれる。



「またね、永遠子。」



「お前にまたねはない。」


「じょーに同意ー。」


ひらひらと手を振る志紀。


それを睨む皐月。




そうして、志紀と潤君と離れた私達は



「遅い。」


「その子は……永遠の知り合いか?」



ベンチの玲と梓にやっと合流したのです。