キケンなアイツとの生活

「じゃあ、キスでもしとく?」
「なんでよ!」
「したいから?」
「茶化してるのは冬弥さんでしょ!」
「茶化してないよ、結構本気」
「っ、」


その目、やめて。こっちまで、本気にしちゃう…。わたしは冬弥さんみたく遊び慣れてないんだから…。


「……なんか、こうしてる間に風呂の準備できそうだね。あとにしようか」
「……うん」


かと思ったら、なにもしてこないっていうオチ…。べつに期待してたわけじゃないけど、少しだけ拍子抜けしてしまった。


「夜景、見に行く?」
「うん!見たい!」
「……そんな感じで言ってほしかったなぁ」
「なにが?」
「キスしたい!って」
「ば、バカじゃないのっ?」


またわたしがプンスカ怒れば、冬弥さんがクスクスと笑う。こういうのってキライじゃない…。でも、ゼッタイ本人には言いたくないけど。


35階から見る夜景は、ココロん中を空っぽにしてくれる気がした。なんにも考えなくていいんだよ、って誰かに言われてるような気がした。


だから、わたしは小さく息を吸った。


「蒼甫がね……」
「……うん」
「彼女と、楽しそうにしてたんだ……」
「……そっか」


冬弥さんは、壊れものを扱うように、優しくわたしを後ろから抱きしめてくれた。