キケンなアイツとの生活

「帰りたくないって…。母さんが自分のせいじゃないかって、気にしてたけどそうなのか?」
「えっ?千夏さん?ち、チガウ!チガウからっ!」


あー、そっか。わたし、家でギクシャクしてたんだった…。そんなの帰らなかったら、千夏さん自分のせいに感じちゃうか…。バカだなぁ、わたしって…。


「そう…。じゃ、とりあえずホテル行くな」
「うん…」


冬弥さんのホテルは言ってた通り、ホントにすぐ近くでビックリした。わたしここまで走ってきたんだなぁ…。なんて、しみじみ思っていると、地下駐車場に入って行き、駐車すると助手席のドアを開けてくれた。


そんなレディファーストなんてしなくていいのに…。そう思っていると今度は手を差し出され、ゆっくりと引っ張り上げてくれた。


「裏口からで悪いな」
「ううん、裏口とか好き」
「おかしな奴」


クスクスと笑う冬弥さんに、こっちまで笑いが込み上げてきた。そしてその裏口から上にも上がれるらしく、少し小さめのエレベーターに乗り込むと35階を押した。


さんじゅうご、って……。そんなすごいホテルだったっけ…。改めて、ビックリしてしまう。そんな怖気付いたわたしをよそに、冬弥さんはなぜかわたしの腰を抱いて無言で立っていた。


やがて〝ポン〟という音と同時に、扉が開いた。そして、冬弥さんに腰を抱かれたまま、ある部屋の前に来た。冬弥さんが持っていたカードキーをかざすと、そこの部屋の鍵が開き、ドアを開けると先に私を入れてくれた。


「わっ、すごい景色……」
「そう?」
「そう?って…あ、見慣れてるのか…」
「だな」