キケンなアイツとの生活

そういう問題なのだろうか…。乾けば問題ないって…。


「ほら、行くよ。歩けるか?」
「うん…」
「お姫様抱っこしてやろうか?」
「……バカじゃない」


わたしが小さな声で言うと、冬弥さんはプッと吹き出した。わたしは顔には出さなかったけど、ココロでは笑った。冬弥さんがトナリにいるだけで、ただそれだけで、安心できたから…。


びちょびちょの制服でホントに乗ってもいいのか迷ったけど、乗らないと帰れないから遠慮がちに乗った。


「なぁ、愛梨」
「……はい」
「なにがあった?オレには言いたくない?」


わたしは無言で首を横に振った。言えないことじゃないから…。すると、冬弥さんはどこかに電話をかけ始めた。


「あー、母さん?オレ。今、愛梨と会った。とりあえず、オレのホテル近いんだ。だから今日はソコに泊まる。……ん?いや、チガウとは思うけど…うん、分かった」


電話の相手は千夏さんだったらしい。今日は、家に帰らないんだわたし…。よかった、とココロの片隅で思う。蒼甫の家の前を通ると、きっと思い出しちゃうから…。


「てことで、家には帰らないけどいい?」
「うん…今日は帰りたくなかったから…」


そう言うと冬弥さんは、目を大きくさせた。あれ、今の発言間違ってたかな。