キケンなアイツとの生活

冬弥さんに抱きしめられたのは、わたしが小さく頷いたのと同時のことだった…。冬弥さんがわたしのことホントは、なんとも思っていなくたっていい。


たぶん、わたしは人の温もりが欲しかったんだと思う。千夏さんのことも、パパのことも大好き。だけど、一人の娘として戻った時。わたしはわたしじゃなくなる…。


「ありがとう」
「な、んで…冬弥さんが、言うの…」
「んー、オレのこと毛嫌いしてただろ?」
「………」
「少しでも距離が近くなったから、言いたくなった。ありがとう」


わたしのほうが言わなきゃいけないのに、先に言われたら、言えなくなる。でも、抱きしめ返したら、伝わるかな…?そう思って、少しだけ冬弥さんの腕にチカラを込めると、冬弥さんもまた、わたしのカラダをギュと抱きしめてくれた。


「これからも、イジメていい?」
「は?」


少しだけ、ほんの少しだけ、気持ちがホッコリした時に放たれた言葉。思いっきり冬弥さんから離れ、眉をひそめれば。


「だって、愛梨イジメがいがあるんだもん。その怒った顔とか、たまらなくなる」
「っ、変態!!」
「変態で結構」
「……っ!!」


やっぱり、冬弥さんは冬弥さんだ。なーんにも変わらない。少しでも、ホッコリした自分が恥ずかしい。


「もう寝なよ、疲れた顔してる」
「そうします…」
「添い寝してあげ、」
「いらない!出てって!!」


なにが添い寝だ!やっぱり冬弥さんは変わらないじゃんか。わたしがいつものように怒ると、冬弥さんは楽しそうに笑った…。