それからはホントに見ているだけの恋だった。


廊下ですれ違っても、お互い声をかけることなく通り過ぎていく。


少し離れたところにいるのを見かけても、近寄って話しかけたりなどはしない。


だけど、圭吾を見かけたときとか、他の人から圭吾の話を聞いたときは嬉しかった。


話しかけられないことは辛いけれど見かけた時はドキドキして、私は小学生の頃の初恋の時の気分を思い出した。


「咲良、変な意地張らないで話しかけたら?」


時々美月が私にそう言う。


だから私はそのたびに、


「変な意地って…。そんなんじゃないよ。私はホントに見てるだけでいんだ」


と返す。


そしたら必ず毎回美月は「ふぅ…」ってため息をつかれるんだけどね。