でもそんな顔を見せたのも、一瞬のこと。
もしかしたら、気のせいかもしれない。
「紺だよ。如月紺。
顔だけなら……俺に似てないこともないけど」
もう、いつも通りの洸の顔。
まだ知り合って一週間だから、顔から感情までは読み取れないけれど、さっきのようにあからさまに悲しそうな顔はしていない。
「へぇ、洸と紺かぁ……。
会いたいなぁ。ねぇね、会わせて?」
洸の弟か兄か分からない紺君も、家族といるときの洸も気になる。
でも洸の返事は素っ気無いもので。
「気が……向いたらね」
そう言って、オレンジを口に入れた。
俯いて落ちた前髪で、顔は見えなかった。

