「じゃ、絶対に口滑らすなよ?
これは『協定』だからな」
カツラを外し、悪人ズラして聞いてくる洸。
ニヒルに笑う口元がすべてを物語っていた。
……また、だまされた……というか、ハメられた……。
「や、やっぱ今すぐ寮長に……!」
「待て」
回れ右して廊下に向かって歩き出したあたしの足を洸がつかむ。
あたしはバランスを崩した。
けれど倒れなかったのは……そのタイミングであたしが壁に押さえつけられていたから。
また目の前にある、洸の整った顔。
女子の中では背が高いあたしでも、洸は背中をかがめて視線を合わせている。