「バカお前……泣くなよ」 すっかり涙声になったあたしが呟く。 「えぇっ、あれ紺さんですかっ!!?」 雑誌と見比べて沙織が叫ぶ。 だけど、そんなのに構わずに。 本当にたくさんの人がいる前で、彼はあたしを抱きしめた。 それでぼろぼろと涙が溢れ出る。 「……アズ」 「……紺ー……ッ!!」 悲鳴やら歓声やらが轟いて、地下街は一気に騒がしくなる。 耳を劈くようなそれも……あたしには聞こえていなかった。