後ろにいる人ごみは、ほとんどが女の子。
パシャパシャと写真をとる音が響き渡る。
そして、先頭に堂々と歩く男性と目が合った瞬間。
「……ッ!」
まるで、全身に電流が流れるような気がして。
秒針が動くのをやめたような気がして。
体のすべての器官が起動しなくなった気がして。
あたしも、彼も動けなくなっていた。
「……紺さん?」
そんな彼を不審に思う男性の声。
「アズ様、ただいま帰……わ、何の人ごみですか!?」
ちょうど帰ってきた沙織の声。
その言葉がすべて脳を素通りしていく。
……そして、意外なことに。
先に涙を零したのは、彼のほうだった。

