『当分日本に行く予定はないようですが……日本に待たせてる人とかいないんですか?
 こんなにいい顔持ってたら、彼女の一人や二人いるでしょう』



はは、と冗談めかして聞く男性。


その一言に、どきりとした。


紺……何て言うんだろう。



そもそもこれはやっぱり、夢かもしれない。


一年半ぶりに紺の顔を見たのに、こんなに冷静でいられるんだ。


胸は高鳴っているけれど、平静に状況を判断できている。




『……日本に、大切な人を残してきました』



……紺の言葉が、真っ直ぐ胸に突き刺さる。



『でも……尚更会いにいけないでしょ。
 無理やりこっちに来たのに、こんな一人前にすらなれていないまま帰ったら、きっと絞めらる。
 ……あいつ、そのへんの男よりよっぽど強いんで』



紺の笑顔が滲んだことで、初めてあたしが泣きそうになっていることに気づいた。