『それにしても本当ですか、あのデザインの"巨匠"を一年半で唸らせたというのは』


『嬉しいことにも。日本でも勉強はしていましたしね』


『いやぁ、日本人の誇りですよ!』



めがねをかけた男性と、マイクを向けられる紺。


その顔は、あの時からまったく変わっていない。


ただ……目つきが違うだけ。




『日本に帰る予定は?』


『そんな! まだまだですよ。
 これから、俺たちの会社を立ち直させなきゃ』


『会社というのは、如月さんのお父さんが建てられた?』


『はい、"Witticism"です』


『そりゃあ、紺さんがいれば百人力でしょう!』


『いえ……物事はそんな簡単には進みませんよ。
 第一まだ、母に会ってすらいないんです。
 連絡がとれなくて……』



紺の声だ。


紺の顔だ。