それなのに彼の口から出たのは、冷ややかな言葉。
「……俺、正直に言うけど、別に梓ちゃんのことを恋愛対象として見たことはないよ」
「え……わっ」
条件反射で興絽さんの顔を見ようとしたら、手で制された。
無理やり下を向かされる。
「紺さんが君に恋したら癪だから。その前に俺と付き合えば手出せなくなると思っただけ。
ただ紺さんを出し抜くための駒にすぎなかった。
だから、告白とか本気にしないでね」
「……興絽さん」
あたしの頭を押さえつけながら、早口で喋る興絽さん。
その姿につい、笑みがこぼれた。
冷たい口調、低い声から、じゅうぶんに彼の本心が見えた。
「……ありがとう」
「……だからお礼を言われるようなことは……!」
「興絽さんって、実は一番不器用なんですね」

