「……空港まで!」


「はいはい。おや、格好いい王子様」


「急げ!!」



タクシーに乗り込み、急かす興絽さん。


あたしは、馬鹿げたコスプレのまま出てきてしまった。



「暑……」


僅かに暖房の効いた車内で、燕尾のジャケットを脱ぎ捨てる。




「……ごめんね。何で迷ってたんだろう……。
 もっと早く言えばよかった。
 やっぱ、心のどっかで、紺さんさえいなくなれば梓ちゃんが俺のものになるとでも思ってたのかな……。
 ……本当、小さい人間だ」



自傷するように笑う興絽さん。


「……なんでですか? 別に、紺は関係な……」


関係ない、そう言いかけてつい止まった。




「……なんだ、梓ちゃんも気づいたんだ。
 自分の気持ち」