「え」 左腕をつかまれた、そう思ったときにはもう、目の前は真っ黒で。 その黒が紺のベストの色だと理解するまで、時間はかからなかった。 「こ……紺!? どうしたの……!」 「ごめん……アズ」 鞄がどさりと落ちる。 だけど、腕一本動かすことができない。 これ以上ないほど強く……紺に、抱きしめられてる。 顔が熱くなっていくのが感じられた。 「ちょ、ちょっと……紺ってば! またふざけて……」 「……ふざけてなんかない」 静かにそう言って、そのままあたしの左目に唇を落とした。