「俺、お前と興絽が付き合ってくれればいいと思ってた。
お前にとっても、興絽にとっても、……俺にとっても」
「な……何……?」
丘から真っ直ぐに街を見下ろして、静かに話す。
「興絽は、ただ俺の気持ちに気づいて、お前を自分のものにしようとしたんだろうけど。
でもお前なら……興絽の心をきっと融かせるから。
興絽を救うことができるから……それでもいいと思ったんだ」
「ねぇ……? 何言ってるのかわかんないよ……」
「そうすれば、俺は無理やりにでも諦められると思った。
でも……無理だった。
気がついたら、アズを手放したくなくなって……走ってた」
ようやくこっちを向いてくれた洸。
その目は、今までに見たことないほど熱く、弱く。
放っておいたら溶けてなくなってしまいそうで。

