「興絽ー、洸ちゃん知らねェ? スマホ取りに行くって言って、帰ってこ……あれ、桜木もいねェ」 「……逃げられたよ。俺も、お前も」 「はァ? お前何言ってんの? 洸ちゃんどこだよ?」 「……さァな」 興絽さんは、出口を指差し、顔を伏せた。 「……ねぇ洸ッ! どこ行くの!?」 走らされて数分。 ここはどこなのか……周りには緑が茂っている。 こんな都会に、こんな場所があったなんて。 「洸ってば!」 でもそんな景色に目を馳せることもできず、ただ洸の髪が遊ぶ様子だけを見ていた。