「迷ってるのは、なんでなの?
好きな男でもいる?」
「いや……そんな人は」
いないでしょ。
本当あたし……なんで悩んでるんだろう。
こんなにいい人が、あたしを選んでくれるなんて。
こんなこと……きっともう一生ない。
なのに……なんで迷ってるんだ?
「なんで……なんでしょう」
濁った紅茶を見つめて呟く。
なんとなく……興絽さんの顔を見れない。
「じゃあさ……とりあえず俺にしない?
本当、とりあえずでいいからさ」
「え……?」
コーヒーカップを傾けて、目を細める興絽さん。
「好きな人ができたら、俺は捨てていいから。
それまで、お試しみたいな感覚で付き合わない?」

