洸の言っていた通り、映画はつまらなかった。
「面白かったですね、NEXTER」
「え、あ、はい……」
それがただの価値観の違いなのか、分からなかったけれど……。
それに、全部興絽さんに奢られてしまうと、だんだん申し訳なくなる。
だから……本当にほしいものが頼めない。
洸みたいに割り勘主義のがいいなぁ……。
「……ところで梓ちゃん……俺がこうやって誘った理由、分かってる?」
喫茶店、一番安い、おいしくないコーヒーをすすっていると、不意に正面から声をかけられた。
「え? 映画を見に……あと、体育祭の」
「はは……っ、本当かわいいね、梓ちゃん。
でも騙されちゃだめだよ、そんなのただの方便なんだから」