寮長に軽く挨拶して通り過ぎると、塀に寄りかかっている人がいた。
「興絽さん!」
黒のパーカーの下のVネックから覗く鎖骨が、すんごい色っぽい。
「ごめんなさい、突然呼び出して」
「いいえ! どうなさったんですか?」
音楽を聴いていたのだろう、黒いイヤホンを外して無造作にポケットにしまう。
……どんな音楽聴くんだろう……。
「その前に……大丈夫ですか? 体調とか。
この間ボール……頭だからやっぱり心配になって」
「え……あ、はい!
まったくなんともないです! 丈夫ですので!」
あ、最後の言葉はいらなかったかも。
洸だったら……こういうときの言葉選び上手いんだろうなァ。

