「それから母さんは……病気になったんだ。
精神的に……大切な支えを二つも失ったんだ、仕方ない。
俺は母さんに、"洸"と呼ばれるようになった。
俺に向けたこともないような優しい顔で……"洸"の名前を呼ぶんだ。
……俺に向かって」
満月を睨み、強く唇を噛む。
下唇からは、血が滲んでいた。
「だから俺は……紺を殺して、代わりに洸を生き返らせた。
デザインの勉強を毎日毎日して、母さんのために、洸の制服を着て。
アズには……ウソついて悪かったな」
……罰ゲーム。
「いいよ、そんなこと……!」
何も考えずに聞き出したあたしが悪いんだ。
「……俺は、如月紺だった」

