レースは短いので、ほとんど差もなく一斉にお題の紙を取りにいく。 そして散り散りになるなか……洸が動かなかった。 お題の紙を見つめたまま、止まっている。 「洸様ー……ッ? ……どうなさったのかしら、そんなに難しいお題?」 「さァ……」 そして何かを決心したように前を向くと、そのまま振り返って、応援席に向かって走ってきた。 お題は……"人"なのか? と、軽々しく考えていると……。 「アズ!!」 洸の、あたしを呼ぶ声が聞こえた。 「え……ッ?」 洸に名前を呼ばれるのは、久しぶりだった。