「あのぅ……すいません」
歩き始めて数分。
タイミングを見計らって、俺は振り向いた。
「ちょっと、お手洗い行きたくなっちゃって……。
すいませんが、待っててくれませんか?」
「……へぇ? そんなこと言って、俺らから逃げるつもりなんじゃないの?」
……ふーん、自分が逃げられる立場だってことは自覚してるんだ。
「そんな失礼なこといたしません!
……あ、このバッグをお二人に預けましょうか?
お財布も携帯も入ってる、大事なものです」
「……そうだね、これ預かっとくよ。
人質ってことで」
そうして俺はバッグを手渡した。

