でも彼らは、顔を見合わせて首を振るばかり。
「そんな……」
ケータイに着信の一件くらいあるかと思ったら、何もないし。
「あの……助けてもらって悪いんですが。あたしちょっと、彼女捜しに行きます。
本当にありがとうございました!
あぁあの、何かありましたら、あたし桜花学園の者なんで、来ていただければ分かるかと。32号室の桜木で呼び出していただければ!」
隣にあったバッグを掴み取り、あいさつもそこそこに走り出す。
「ちょ……ッ、まだあんまり無理しちゃ……!」
引き止める声が聞こえたけれど、構っていられない。
「洸……頼むから出ろ……ッ!」
祈るように呟きながら電話をかける。
そして、自販機に向かって人ごみを走っていた。

