胸がさっきからチクチクする。

あの光景が脳裏から離れない。

何度も、何度も頭の中でリピートされるみたいに。

思い出すたび胸がまたチクチクと何かが刺さる。

目頭も熱くなってくる。


「心向、もうすぐリレー始まるよ。あたし達はBチームだから先にAチームが走るみたい」


ユウカちゃんにそう言われ私はリレーのコール場所に行った。


「あれ?」


後ろからそんな声がした。

私は振り向かなくても誰か分かった。

今は声を聞くだけで涙が出そうになる。


「先輩・・・っ」


そう、陽汰先輩。


「リレー出るんだ。何走なの?」

「さ、3走です!先輩も出るんですか?リレー」

「うん。Aだけどね。アンカー任されちゃったよ」


先輩は少し苦笑した。


「そうなんですか。が、が・・・張って下さいっ」


すると先輩はクスっと笑ってこう言った。


「うん、ありがとう。頑張れる」


"頑張る"じゃなくて"頑張れる"って言ってくれたのは私が"頑張れ"て言ったから?

そう聞いてみたかったけど止めておくことにした。

今はこれだけで十分、幸せな気持ちになれたから。