その日は割と普通に授業を受けて、知奈ちゃんと話したり、早瀬と話したり。午後の英語のリスニングではまこちゃんとペアだったけど、普通に話してくれた。
「結衣の発音キレー!」
「まこちゃんとペアやりやすい~。」
まこちゃんが普通に話してくれて、怒りとか驚きより安心した。朝の出来事がまるで嘘みたいなまこちゃんの態度。
だけど、嫌われてなくてよかったな、なんて思いながら英語のリスニングをしていた。
「結衣、ここどうやんの。」
早瀬が机を近付けてあたしのプリントを見る。あたしは早瀬にプリントを渡して別冊のワークブックを記入。
「そこはコレを訳すんじゃない?」
「あー、確かに。」
早瀬も納得したらしくて、ポンポンとあたしの頭を撫でて自分の机をまた引っ張って戻っていった。
「っ、」
なんだこれ。
今日はわりと早瀬に絡んでいなかったから、早瀬に触れたのは今が初めてだ。しかも、早瀬から触ってきたし。なんか、恥ずかしい。
あれこれ考えながら俯くと、まこちゃんがトントンとあたしの肩を叩いた。
「結衣、」
「ん?」
笑いながら振り向けば、何かを考え込んで、まこちゃんはなんでもないと小さな声を漏らしたから。特に気にせずにあたしは前を向いた。
「…やっぱり、結衣かぁ。」
なんて、まこちゃんが小さな声で悲しそうに呟いていたなんて。
その時のあたしは、自分に迫っているナニカにも、まこちゃんの言葉の意味にも、まだ気付いてなかった。
そして、ついに。ーー事件は起きた。