「桃!そろそろ起きなさい!こうちゃん、来るわよ!」

「はーい!」

あー!

もう!

なんでこういう時に限ってネクタイがうまく結べないの!

制服のネクタイは好きだけど、たまにパチっと止めるだけのリボンは簡単そうでいいなって思う。

なんとかネクタイを不格好に結ぶと、急いでかばんを掴み、下に降りる。

「ほら、早く食べちゃって!駿も!」

専業主婦のお母さんは今日はこうちゃんのお母さん、鈴香さんと朝からフラワーアレンジの教室に行くらしく、バタバタしている。

「姉ちゃん、ネクタイ曲がってるよ。」

駿がパンを齧りながら私の姿を一瞥する。

「もういいの!」

それより、時間がない!

あと五分でこうちゃんが来ちゃう!

急いでパンと目玉焼きを牛乳で流しこむ。

「じゃあ先出るからね!ここ、鍵おいておくからよろしくね!桃、今日ピアノの日でしょ、月謝袋ここに置いておくから忘れないで!駿、ユニホーム洗濯しといたから!」