「ギリギリセーフ!!」



チャイムが鳴り終わる前に、飛び込んだ教室。



この日は初めて寝坊してしまい、歯だけ磨いて自転車を飛ばし、教室までは廊下を走った。



「ふぅ…」と溜め息を吐き、席へ座ろうとしたところへ、いつもとは違う声が聞こえた。



「矢野、全然セーフじゃないぞ。アウトだ」



「えぇっ!?ど、どうして藤堂先生が……」



ウチの担任は、おじぃちゃん先生なハズなのに、どうして…。



わたしがあたふたしていると、藤堂先生は「フン」と鼻を鳴らし。



「今日だけ、俺が担任なんだ。運が悪かったな、矢野」



ガーン…。



寄りにもよって遅刻してきた日が、学年主任の、しかも先生の中でも一番に恐れられている先生にあたるなんて、ツイてない…。



わたしはガクリと肩を落とした。



「んー、そうだなぁ。罰として……」



藤堂先生の言葉に、ゴクリと唾を飲んだ。



見れば、周りの生徒達も顔が引き攣っていた。



「体育館の床の、雑巾掛けにするか」



いーーやーーっ!!



わたしは、声も出なかった。