「よし、じゃぁ帰るか」



満足そうに笑った、陽希先輩。



わたしはというと、恥ずかしさで顔が熱い。



手を繋いで、家まで送ってくれた陽希先輩にわたしは聞いた。



「あ、あの。わたしのこと見てたって言ってましたよね、大野先輩」



わたしの言葉に、眉間に皺を寄せた陽希先輩。



え、聞いちゃマズかったのかな…。



パニックになったわたしに、陽希先輩は口を開いた。



「俺が皺寄せたのは、その敬語と先輩ってやつだから」



「へっ!?」



思わぬ言葉に、変な声が出た。



「俺ら付き合ったんだから、敬語ヤメロ。んで、名前も陽希で」



「えぇっ!?無理…、でっす」



敬語は頑張ってタメ口にするとしても、呼び捨ては…。



「じゃぁ、すみれの質問は答えない」



「そんなぁ…」



いつの間にか、陽希先輩はわたしを「すみれ」と呼んでいてドキリとした。



陽希先輩も、名前で呼んだらドキッとしてくれるのかな…?



「ほら、だから言えって」



「うぅ…」



でも絶対、からかってると思うんだ。



だってさっきと同じ、目がニヤけてるんだもんっ。