『毅然と歩いて、挨拶してくる人だけに挨拶すればいいから。』
というおばさまの声を思い出し、ただ前を向くことだけを意識した。
「やぁ、綺麗な方だ、どちらのご令嬢かな?」
と、なんともダンディなイケメンおじさまに声をかけられた私。
「こんにちは、三上翠です。」
少し微笑んでそう言うと、おじさまは愉快そうに笑った。
「君が三上グループのご令嬢さんだね?隠してきただけあってとても美しい方だ。」
「…いえ、そのように褒められたことがないので困ってしまいます。」
思ったことを言うとはっはっはと、また愉快そうに笑うおじさま。
「あぁ、紹介が遅れたね。私は雅宗次郎。三上グループとはとても仲良くしてもらっているんだ。」
…雅って、雅ホールディングス?
そんな大物も来てるのね…
私、場違いじゃないかしら。


